今回は、前記事「賢い年金のもらい方とは!?知っておきたい年金の仕組みPart.1」の続編として、定年退職後に年金をもらう時期になってからの年金の仕組みや注意点などを解説していきます。
定年を迎え、そのまま定年退職する方、または継続雇用や再就職をする方もいらっしゃるでしょう。この継続雇用や再就職をする場合には、在職しながら年金をもらうことができたり、給付を受けることができます。
ではまず、国民年金・厚生年金の年金額はどれくらいもらえるのかについて見ていきましょう。
Part1はこちらの記事、賢い年金のもらい方とは!?知っておきたい年金の仕組みPart.1
にて紹介しています。
年金の基本的な事についての記事は、【自分が受給できる年金は?】年金について詳しく解説!
にて紹介しています。
年金額の計算のしかた
国民年金の年金額計算
国民年金の支給のされ方は「定額支給」です。
そのため、加入した期間が同じなら、誰もがその加入期間に応じた年金を平等に受け取ることができます。
計算方法は以下の式で表すことができます。
≪平成21年4月以降≫
このように計算できます。
「保険料免除期間の月数」ですが、これは免除されていた期間も年金の計算対象に入れますよ、という意味です。
例えば全額免除を受けていた時期は4/8=1/2、つまり本来の年金額の半分が支給されるようになっています。
1/4免除されていた時期、半額免除されていた時期、3/4免除されていた時期はそれぞれ5/8、6/8(=3/4)、7/8をかけて計算されます。
簡単に言うと、満額779,300円から免除期間の部分が減額される、ということです。
免除期間などを除いて大雑把に自分の年金額を知りたいときは、自分が加入していた期間1年につき2万円が支給される、と考えると良いでしょう。
また、公的年金は毎年4月に改定されます。現役加入者の給与が変動したり、物価が上下したりすることによる影響を加味してこのような措置がとられています。
年金の支給は2か月に一度行われます。偶数月に2か月分の年金がいっぺんに支給されるようになっています。
厚生年金の年金額計算
厚生年金の支給額は、前記事の年金の仕組みでも解説したように「給料に応じて年金額が高くなる」ようになっています。
この厚生年金ですが、男性なら昭和36年4月2日以前、女性なら昭和41年4月2日以降に生まれた方々には「報酬比例部分」というものがあります。
また、男性で昭和24年4月2日以前、または女性で昭和29年4月2日以前に生まれた方々には「報酬比例部分」と「定額部分」があります。
これら「報酬比例部分」、「定額部分」に当たる年金は、現行法で定められている65歳での年金受給開始よりも前に支給され始めます。
この「報酬比例部分」、「定額部分」とはいったい何なのでしょうか。
これは、現在行われている年金支給年齢引き上げに際し、段階的に引き上げていく措置を国がとっていることから生み出されたものなのです。
厚生労働省は、平成42年度に男女含め年金支給年齢を65歳に引き上げ完了することを目標としています(下図参照)。
出典:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001r5uy-att/2r9852000001r5zf.pdf
では、この「報酬比例部分」と「定額部分」についての計算方法を見ていきましょう。
定額部分
定額部分=1.625×被保険者月数×生年月日に応じた率
という計算式で求めることができます。
まずこの「被保険者日数」ですが、
・昭和9年4月2日~昭和19年4月1日生まれは上限444か月
・昭和19年4月2日~昭和20年4月1日生まれは上限456か月
・昭和20年4月2日~昭和21年4月1日生まれは上限468か月
・昭和21年4月2日以降生まれの人は上限480か月
と決まっています。
次に「生年月日に応じた率」は、以下の表によって決まります。
次に、報酬比例部分の計算方法です。
報酬比例部分
報酬比例部分の計算は以下の式で計算します。
語句の解説です。
・平均標準報酬月額は、標準報酬月額を平均したものです。(標準報酬月額については国民年金(共済年金)の保険料を参照)
・平均報酬額は、賞与を含んだ報酬の月額平均のことです。
・平均標準報酬月額にかける「生年月日に応じた率」、平均標準報酬額にかける「生年月日に応じた率」は以下の表によって求めることができます。
これら「国民年金の年金額」、「厚生年金の年金額」に加え、厚生年金に加入していてかつ配偶者がいる場合、「加給年金」を加算して計算します。
加給年金はいわば「家族手当」のようなもので、扶養している配偶者がいると389,800円をもらうことができます。
また18歳未満の子供がいる場合、2人目までは一人当たり222,400円、3人目以降は一人当たり74,100円がもらえます。
なお、配偶者が対象なので、妻と夫が逆であっても問題ありません。妻(夫)が65歳になるまで支払われます。妻が年上の場合は、振替加算をもらうことができます。同年代でも問題なく支給されます。
また、昭和41年以前生まれの配偶者の場合は振替加算という加算が老齢年金に上乗せされます。
この加給年金は、65歳前に報酬比例部分だけを受給している場合はもらえません。
以上をすべて足し合わせることで、年金受給額の計算ができます。
年金は老齢年金だけじゃない!
年金は生命保険としても機能する
公的年金制度を老齢年金という視点からのみ見ると、自分にとって損しかないように思われます。
ですが、年金は生命保険の機能を併せ持っているのです。
公的年金が持つ生命保険の役割を果たす部分は、「障害年金(障害給付)」と「遺族年金(遺族給付)」です。
障害年金と遺族年金の特徴として、老齢年金は老後でなければ給付を受けることができませんが、障害年金と遺族年金は若いうちから給付を受けることができます。
障害年金、遺族年金は老齢年金と同じように階層構造になっています。
老齢年金では1階が「老齢基礎年金」、2階が「老齢厚生年金」でしたが、障害年金であれば1階が「障害基礎年金」、2階が「障害基礎年金」になり、遺族年金であれば1階が「遺族基礎年金」、2回が「遺族厚生年金」となります。
厚生年金に加入していれば、基礎部分と厚生部分を合わせて受給できます。
最初に「障害給付(障害年金)」から見ていきます。
障害給付(障害年金)
障害給付は、事故や病気によって自身の体に何らかの障害が残ってしまったときに受けることができる給付です。
国が決めた基準以上の障害となった際に給付を受けることができます。
一定の基準の例として、
・両上肢の機能に著しい障害を有するもの
・両下肢の機能に著しい障害を有するもの
・両眼の視力の和が0.04以下のもの(矯正視力)
・両耳の聴力レベルが100デシベル以下のもの
(いずれも一級)
・1上肢の機能に著しい障害を有するもの
・1下肢の機能に著しい障害を有するもの
・両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの(矯正視力)
・両耳の聴力レベルが90デシベル以下のもの
などがあります。
上記のような障害になると、障害年金を受け取ることができます。
遺族年金
たとえばサラリーマンの夫と専業主婦の妻、その間に2人の子供がいる家庭があるとします。
万が一この夫が交通事故や病気で死亡してしまうと、残された妻とその子供の生活が維持できなくなってしまいます。
こういった場合に年金制度へ加入していると、遺族年金を受け取ることができます。
遺族年金は、公的年金への加入者・受給者が死亡した際に、遺族に対して遺族年金を支給してくれます。
この障害年金と遺族年金の注意点として、「保険料を納めていないともらえない」という点があります。国民年金を一定以上滞納(未納)していると、障害年金や遺族年金はもらえません。
まとめ
前記事、今記事と2回にわたって年金の仕組みについて解説してきました。
賢い年金の受給に仕組みの理解は欠かせないのでよく理解しておきましょう。
年金に関する記事をまとめましたので、良かったら参考になさってください☟